着物のカラーコーディネート<色相の配色と顔タイプ>
色相から考える顔タイプにあうカラーコーデ
着物、帯、帯締め、帯揚げのコーディネートは着物姿のイメージをつくります。
どんな雰囲気のコーディネートにしようかと考えるのは、着物の楽しみですね。
でも、自分に似合うコーデって?
パーソナルカラー診断、顔タイプ診断を受けて
似合う軸はわかったけれど、実際に何を選んだらよい?
と迷われる方も多いようです。
パーソナルカラーと顔タイプに似合う柄や素材など
すべて取り込もうとすると、かなり複雑なことになります。
いちばんに考えやすいのは色合わせ=配色。
着物初心者の方、
いつも着物と帯、小物の取り合わせを悩んでしまう方は
この色合わせはしっくりくるのはなぜなのか?を考えたコーデにすると
着物姿に自信が持てるようになりますよ^^
効果的な色の使い方で、自分の好きな雰囲気を作りましょう♪
下の着物コーディネート、どんなイメージがありますか?
あ、このコーデ好き!
あれ?これは自分ならしないな、
といったイメージの感想だけではなく
しっくりくる、安心する色合わせだな、とか
これはコントラストが大きいな
など色に対する感覚があると思います。
そして、どんな方が着たら似合いそう、なんてイメージも頭に浮かぶと思います。
配色と顔タイプには、実は大きな関係があるからです。
今回は色相の配色と、どんなタイプの方に似合うかをご紹介します。
配色の美しさを決めるのは「統一」と「変化」のバランス
少し専門的になりますが、色彩についてお話します。
色合わせ=配色には技法があります。
・色から考える色相配色
・明るさや鮮やかさから考えるトーン配色
配色用語になりますが、ベースカラーとは面積が大きく、全体のイメージを決める基調色。
アソートカラー(サブカラー)とは次に大きい面積の色で、ニュアンスを与えてくれる配合色。
アクセントカラーとは面積は小さいけれど、その配色を引き締めたり、変化を与える強調色。
着物は、その配色バランスでイメージが表現しやすいものです。
・面積の大きい着物はベースカラー:着物姿のイメージ作りの色
・帯はアソートカラー(サブカラー):着物姿の方向性にニュアンスをもたせる色
・帯揚げ帯締めはアクセントカラー:なじませるか目立たせるかでイメージを確定する色
草履やバッグ、髪飾りなどにも効果的な色を加えるとさらにイメージが強まります。
色彩の調和
どのような色の組み合わせが、バランスのよい素敵な配色になるのでしょうか。
色彩調和の研究は古代ギリシャ時代から始まり、
ニュートンのスペクトル光の発見などを経て
18世紀には欧米諸国で多くの説が発表されました。
・シュヴルール(1786〜1889 フランス) 「類似色の調和」「対比の調和」
・ルード(1831〜1902 アメリカ) 「色相の自然連鎖にしたがった配色は美しい」
・オストワルト(1853〜1932 ドイツ) 「調和は秩序に等しい」
・イッテン(1888〜1967 ドイツ)「調和とはバランス」「色彩調和には客観性が必要」
・ムーン&スペンサー夫妻(アメリカ) 1944年に配色の評価を「美度計算」で数値化
などなどで、それぞれの色彩論にはなるほどと納得します。
そして、これらの説の特徴をまとめたのがアメリカの色彩学者ジャッド(1900〜1972)です。
ジャッドは、数多くの色彩調和論に共通する原理を4つにまとめました。
配色の美しさを決めるのは「統一」と「変化」のバランスで、その原理は
1.「秩序の原理」 規則的に選択した色は調和する
2.「なじみの原理」 自然光で見た色のように日常で見慣れている色は調和する
3.「類似性の原理」 同系色相など共通性がある
4.「明瞭性の原理」 コントラストのある明快な配色の調和
1〜3が配色の「統一」、4は「変化」を説明するものです。
少し難しくなりましたので、次は具体的な例をあげて配色をみましょう。
色相環でみる着物の色合わせ
学生時代、美術の授業でマンセル表色系、オストワルト表色系など
きいた記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではファッションによく使われるPCCS(Practical Color Co-ordinate System)でお話しします。
PCCSは日本色彩研究所による表色系で、日本語では「日本色研配色体系」といいます。
色の表示は、24色の色を表した色相環と、明るさと鮮やかさをまとめて表したトーン(色調)マップでみることができます。
PCCSの色相環は、色を順番に並べたもので、24色が知覚的に等間隔になるよう円形に置かれています。
この色相環の中で、どの色とどの色を組み合わせれば、
しっくり調和した着物の配色になるでしょう。
配色によって、イメージがどのように変わるのかみていきます。
色相環の中の黒丸が着物の色、赤丸が帯の色です。
着物の色は8番の黄色にします。
着物の色が変われば、雰囲気は変わりますので
色によって似合いやすい顔タイプがあります。
同色色相配色
統一感が感じられる同じ色の着物、帯のコーディネートです。
どちらも8番の黄色を使ったコーデ。
色の持つイメージ=色の心理効果(これはまた別の記事で)が強いコーデになります。
全身一色は、なかなか勇気のいるコーディネートですよね。
目立ちたいとき、個性的な着物姿を演出するときには最強です。
顔タイプなら、アクティブキュートさん、
色を変えれば、クールカジュアル、クールタイプの方にも。
着物と帯が同色の場合は、濃淡でグラデーションをつけると
普段でも着やすいコーデとなります。
同じ黄色に黒を少し混ぜた帯をいれた濃淡コーデです。
色の印象が少しソフトになります。
同色の濃淡グラデーションは大人タイプの方にお似合いですが、
色により子供タイプの方にもあいます。
また、どこかにアクセントとなる色を取り入れると
変化の調和を感じられます。
アクセントカラーとして、着物の明るい黄色とは反対の暗い黄色の帯揚げと
黒の帯締めを入れました。
ほんの少しの面積でも、アクセントとなる色が入るとコーディネート全体が締まります。
寒色やダークな色のワンカラーコーデなら
クールカジュアルさんや、クールさんにお似合いになりやすいです。
黄色とは印象が変わります。色のもたらす印象の違いは大きいですね!
隣接色相配色
色相環の中で隣り合う色の組み合わせです。
色相環の色には数字がついています。この数字の差が1の色です。
色相環の一番上の黄色は8。
その隣は7(赤みの黄)と9(緑みの黄)。
帯だけを変えてみても、同色色相配色よりも変化が出てきます。
帯と小物をそれぞれ隣接色相で選ぶと、さらに変化が大きくなりますが
色に共通性があるので、調和のとれたコーディネートが完成します。
使っている色に共通性があると、まとまりのあるソフトな雰囲気になります。
顔タイプでキュート、フレッシュ、フェミニン、ソフトエレガントタイプの方は
お似合いになりやすくなります。
類似色相配色
色相差が2か3の色との配色です。
着物の黄色が8なので、帯には5(だいだい)、6(黄みのだいだい)、10(黄緑)、11(黄みの緑)の色を入れた場合です。
黄色から青に向かう間の色は緑系。
色相差2と3です。
黄色から赤に向かうオレンジ系の色。
暖色の色相差2と3です。
小物までは変えず、帯だけを変えました。
色相差が2は、ソフトな雰囲気です。
色相差が3になると、帯の存在感がでてきます。
上の2点では、黄色と黄緑のコーデは爽やかな印象に、
暖色のだいだいとのコーデは可愛らしい印象になりますね。
着物の色が黄色ではなく穏やかな色みであれば
色相差2のソフトな雰囲気はソフトエレガントの方、
ソフトな暖色との組み合わせはフェミニンタイプの方に似合いそうです。
以上、同色、隣接、類似の配色調和は、ジャッドの「類似性の原理」により説明できます。
これから下は、ジャッドの「明瞭性の原理」、明確なコントラストがありつつも調和するとされる配色です。
対照色相配色
色相差が8,9,10の配色で、各色の共通性はなくなります。
8の黄色に対しては、16(緑みの青)、17(青)、18(青)、22(紫)、23(赤みの紫)、24(赤紫)です。
色相差8はコントラストはありますが、調和が感じられます。
色相差10の紫になると、着物と帯の両方の色がそれぞれ主張してきますね。
個性の強いコーディネートになりますので、
アクティブキュート、クールカジュアル、クールタイプの方と相性がよいです。
彩度(鮮やかさ)を調節することで、もう少しなじみやすく、上品な印象になります。
エレガントタイプの方にも似合いやすくなります。
(彩度については記事をあらためます)
補色色相配色
補色は円の反対側に位置する色です。
色相環の差が、11または12の色です。
反対色になるので、はっきりとしたコントラストがつき、目を引く配色になります。
黄色8に対しては、19(紫みの青)、20(青紫)、21(青みの紫)です。
こちらも個性の強いコーディネートになりますので、
アクティブキュート、クールカジュアル、クールタイプの方向きです。
調和しにくい配色
これまでにあげられなかった色相差4,5,6,7の配色は
残念ながら調和しにくいといわれる配色です。
それぞれの色に共通性がなく、
また明らかな違いもない場合、中途半端な印象になるのです。
黄色8に対しては、1(紫みの赤)、2(赤)、3(青みの赤)、4(赤みのだいだい)、12(緑)、13(青みの緑)、14(青緑)、15(緑みの青)です。
コントラストがあり、帯が目立ちます。
個性的ですが、洗練感された印象とは遠いので大人タイプの方には難しそうです。
アクティブキュート、クールカジュアルの方にはお似合いになりそうですね。
こちらも中差色相配色ですが、黄色に色相差6の青緑をあわせても、
それほど違和感を感じません。
これは自然界で目にする緑の枝葉に咲く黄色の花のイメージに共通する配色だからです。
ルードの「自然調和」、ジャッドの「なじみの原理」の説に納得です。
色相環上の違う色であわせた場合には、
少々違和感のある配色になることもあります。
ただ、似合う着物という目で見た場合、配色が完璧であったとしても、
実際には着用する人の個性に調和していることが一番大切です。
使う色のイメージ(色の心理効果)、配色のイメージは、
その人の顔タイプや雰囲気にあっていることで、もっと素敵な印象になります。
着物のコーディネートを考えるときの参考にしてみてくださいね。
色相環は友人のNさん作成のもの
着物女性のイラストはACイラストのInui nekoさんの作品を
アレンジさせていただきました。
ありがとうございます!