インドネシアのイカットと生活文化のつながり

たばこと塩の博物館で『江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~』を拝見しました。


江上幹幸氏は民族考古学のご専門。ご自身の研究テーマは製塩、交易だそうです。
そのような関係で、たばこと塩の博物館での展覧会なのかと思いますが、調査に訪れたレンバタ島ラマレラ村で収集したイカットを見ることができます。

インドネシアは大きな7つの島(スマトラ島、ジャワ島、バリ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ティモール島、マルク諸島、パプア島)のほかに1万3000を超える小さな島があり、イカットも地域によって特徴があります。隣村でさえ模様が全く違うそうで、ヒトの形、動物や鳥、船、幾何学模様や縞模様、少しずつ違う個性を持つ布がたくさん見られて感激しました。

今回の展示では3つの地域で収集された50点ほどが展示されていました。
現在は合成染料で染められたイカットが大半ですが、藍、茜などの草木染めで染められたイカットは素朴でありながら深い色あいで見ごたえがあります。

綿花を栽培し、糸を紡ぎ、藍や茜で染め分けて腰機で絣柄に織った腰衣、腰巻、肩掛け。
日々の暮らしのイカット、婚礼などハレの場で装うイカット、布の質感のちがい、
他の美術館の照明より明るいのでとてもよくわかりました。

イカットのほかにも民俗学の視点で現地の方々の生活文化が詳しく紹介されており、そちらもとても興味深いものでした。

天然の素材、染料を使ったイカットが作られるのは、山と海に住む人々の交易によるもので、
藍の発酵に必要な石灰は沿岸部に住む人々がサンゴを焼いて作ること、
それを山に住む人々に運んで藍染めに利用することを知りました。

沿岸部に住む人々は塩やクジラ肉の燻製を作り、
山に住む人々はとうもろこしや米、バナナ、藍などを作って物々交換。

掌いっぱいの塩が「モガ」という単位で、それを基本にして、山で採れた農産物や染料などと交換する様子が写真で紹介されていました。
1モガでとうもろこし6本、バナナ6本などと交換できるようです。クジラ肉1片だと2モガくらいの価値があるようです。

レンバタ島でしか許されていないクジラ漁や製塩なども紹介されていて、インドネシアの島の暮らしの一端が垣間見られます。4月9日までです。

日本の絣は久米島がはじまったそうです。
15世紀半ば〜後半、東南アジアの国々から伝わった絣の技術は久米島の堂之比屋という人(身分とも)が発達させて沖縄本島、奄美大島から本土に伝えられ、大島紬や結城紬、久留米絣の原型となったといわれています。

この日はイカット=絣にかけ、久米島紬ででかけました。
リサイクルイベントで見つけ、ひと目で模様が気に入り仕立直ししたものです。
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