防虫剤選びで気をつけたいこと
着物を整理して収納するとき、必ず防虫剤を入れることと思います。
大切な着物や帯が虫食いなんて悲しいですものね。
実は、虫は絹という繊維を食べたくて寄ってくるわけではありません。
絹についている汚れ(皮脂汚れとかホコリに混じった栄養源)を食べにきて
一緒に絹も食べてしまい、着物に穴を空けてしまうのです。
ですから、着用した着物の汚れやホコリはよく落としてから収納すること、
収納場所のホコリにも気をつけることが重要です。
虫の大好物のウール製品と一緒に収納するのは御法度!
防虫剤選びにも気をつけたいことがあります。
防虫剤の選び方
防虫剤選びで悩むことはありませんか?
一緒に使ってはいけない組み合わせがあったけど、、とうろ覚えで、
店頭でセールになっている防虫剤を買ってきて、
家にあるのと比べてみたら、違った!なんてこと、私はよくあります。
違う種類の防虫剤を混ぜて使うとシミになります!
薬剤成分が化学反応を起こして溶け出し、それが着物についてしまったら、
そのシミはもう落ちません! 悉皆屋さんでも諦めてねと言われますよ。
では、どの種類の薬剤を併用してはいけないのでしょうか?
ざっくりいうと、臭いのあるものとないものです。
無臭のもの:ピレスロイド系
有臭のもの:パラジクロルベンゼン系、ナフタリン、しょうのう
無臭のピレスロイド系は、違う薬剤成分である有臭の防虫剤と同時に使っても大丈夫ですが、
有臭の薬剤成分は、他の薬剤成分との併用はできません!
有臭どうしでも混用不可です。
無臭の防虫剤
*ピレスロイド系
(ムシューダ、ミセスロイド、和服の友等)
ピレスロイド系は、他の薬剤成分と併用できます。
サイズや形状が多種類あるので、用途によって使い分けることができます。
黄ばみ防止成分やカビ防止成分が含まれているものもあります。
着物用にシート状のもの、調湿剤つきのものもあり、
金銀糸にも使用可能と明記してあるものもあります。安心ですね!
上記ふたつは、着物の上に広げる薄いシートタイプです。
こちらは、上の画像の様に箪笥の底に敷き、その上に着物を収納します。
シリカゲル入りで、必要なサイズに切って使うこともできます。
和服の友は、防虫剤と、防カビ、乾燥剤が1枚ですむので、私は愛用しています。
使用期間は1年ですが、乾燥剤(シリカゲル)は日に干せば繰り返し何度も使用可能です。
ピレスロイド系は、銅と反応して変色する恐れがあるので、銅を含むものには注意が必要です。
洋服の場合には、真鍮のバックルとかボタンに気をつけたいですね。
現代の着物には銅はあまり使われていないと思いますが、
江戸時代の着物には金糸に見えても、純度が低く、銀や銅が多く含まれているものがありました。
同じ小袖でも、場所によって金糸の色の変色具合が違うのは、純度の違う金糸だからです。
ここ数年のフレグランスブームで、
無臭タイプであるピレスロイド系にも、香料が入っている商品が多くなり、
香りのあるものがありますので、とてもわかりにくいです。
やはり裏面の成分を確認することが必要ですね!
有臭の防虫剤
*パラジクロルベンゼン系(ネオパラ、パラゾール)
パラジクロルベンゼン系に着物用の商品はなさそうです。
パラジクロルベンゼン成分に防カビ性があります。
即効性があり、ウールや絹の保存に向きますが、
高温多湿だったり、プラスティックと反応すると溶ける可能性があるので注意が必要です。
着物とプラスティックの組み合わせは違和感ありますが、
着物と一緒にコーリンベルト等を入れると、一部は危険なのかもしれません。
塩素が出て、金銀糸や金彩を変色させる心配もあります。
*ナフタリン (ネオパース)
防虫効果が高く、効き目が長期間続くので、人形やフォーマルウェア等の長期保管に向きます。
気温が高いと薬剤の減りが早いので、補給のタイミングを確認する必要があります。
金銀糸には使用不可です。
*しょうのう
しょうのうはクスノキが原料の、天然由来の防虫剤です。
「日向しょうのう」を製造している株式会社えこのはさんのHPでは、
天然しょうのうの製造方法が詳しく紹介されていました。
えこのは プロダクトストーリー内
昔ながらのしょうのう、あの独特の香りは懐かしい気もしますが、
アロマと呼ぶには強烈だったことを思い出します。
天然成分の防虫剤はしょうのうだけ。
絹、ウール等の高級衣類に向いているとされます。
金銀糸への影響はなく、人体にも安心です。
和の雰囲気が素敵な、鳩居堂さんの「防虫香」も天然成分です。
着物にお使いの方を見たことがありますが、着物用ではありません。
鳩居堂さんの商品説明にもありますが、書画・掛け軸・料紙・骨董用とのことです。
お雛様や五月人形には良いそうです。
*防虫剤を使用する時の注意
・薬剤の有効期間は6ヶ月から1年くらい
虫干しや季節の入れ替え時に交換するのがおすすめです
・収納場所の大きさに見合った量を守ること
それぞれの注意書きを参考に、決められた用量を守りましょう
防虫剤は人間にも害を与えます(体が小さい虫に、先に効いている感じです)
・着物や帯に直接触れないように、たとう紙の上におく
たとう紙の中に入れると、万が一が心配です
・引き出しの中なら、たとう紙の上の両隅や四隅におく
薬は重いので、下に向かって成分が広がっていきます
・人形の衣装等に使う場合は、衣装を紙で包んで防虫剤が直接触れないようにしておく
・違う種類の防虫剤を使う場合、以前使っていた防虫剤が不明の場合、においがのこっている時は、十分においをとばしてから使用する
以前の薬剤が残っていると、シミの原因になります
どんな薬剤成分か不明な時は、着物に残っている薬剤を十分にとばしてから
次の薬剤を入れましょう
防虫剤の使い方で、いちばん安心なのは、
それまで使っていた防虫剤を覚えておいて、それを使い続けることですね!
大切な着物が虫の害にあわないよう、あっても早く発見できるよう、
そして湿気を含んでカビが発生しないように、チャンスがあれば着物を着ましょう。
着るのがいちばんのお手入れ法です^^
無理であれば、お天気のよい時に虫干しして大切な着物を守りましょう!